1型糖尿病と糖質制限
「急上昇した血糖値をインスリン投与により急低下させる」という行為自体が命に関わる低血糖のリスクとなり、QOLを著しく低下させることになります。
また、大量の糖質を食べながらインスリンを打ち続けた場合、たとえHbA1cをコントロール出来たとしても、糖尿病合併症(失明・腎不全・下肢切断)は確実に進行します。
◆1型と2型の違い
・1型糖尿病
自己免疫疾患等によって、インスリンを産生する膵臓の細胞が破壊されてしまった状態。
体内でインスリンを産生することはできず、身体の正常な代謝経路は成り立たなくなる。
糖尿病全症例のおよそ5~10%を占める。
生活習慣病ではない。
・2型糖尿病
インスリン産生をする膵臓の細胞が疲弊し、だんだん死んでいく状態。
いわゆる膵臓過労死型。主に生活習慣病で陥る。
インスリン抵抗性による2型糖尿病は欧米人に多く、この場合、膵臓自体は元気なので、肥満が解消されれば治ってしまう。
ただし、日本人の場合は膵臓過労死型が多いので、初期の2型だからと言って甘く見てると膵臓の細胞が次々に過労死し、1型と変わらないレベルに至ることがある。
◆糖質代謝とインスリン
・普通の人(普通食)
糖質を食べる
↓
血糖値が急上昇する
↓
膵臓から追加インスリンが分泌される
↓
血糖は細胞へ渡り、血糖値が速やかに低下する
・糖質制限食
糖質制限食を食べる
↓
血糖値は殆ど上がらない
↓
「糖が無いので脂肪をエネルギーにしよう」
↓
食事脂肪または体脂肪が分解され、血中にケトン体が放出される
↓
「お待たせ致しました。ケトン体で御座います」
↓
細胞はケトン体をエネルギーとして利用する
・糖尿病の人(特に1型)
糖質を食べる
↓
血糖値が急上昇する
↓
膵臓から追加インスリンが分泌されない
↓
細胞へ血糖が渡らない
↓
「糖が無いので脂肪をエネルギーにしよう」
↓
体脂肪が分解され、血中にケトン体が放出される
↓
「ちょ、おまww糖がww邪魔wwww」
↓
血液中に糖とケトンがごった返しになり、血液が一気に酸性に傾く
↓
死ぬ
※基礎インスリン:常に分泌されているもの。無いとヤバい。
※追加インスリン:血糖値を速やかに下げるため膵臓から緊急出動する援軍。
※ケトン体:痴漢冤罪並みに気の毒な身体のエネルギー源。むしろ心臓は糖よりケトンを好むのだが。
※生理的ケトーシス:いわゆる脂質代謝モード。脂肪燃焼モード。
※糖尿病性ケトアシドーシス:インスリン機能不全に起因する致命的な急性代謝障害。すぐに治療しないと死ぬ。
※※※ご注意※※※
名前が似ているのでよく誤解されがちですが、生理的ケトーシスと糖尿病性ケトアシドーシスは、完全に別物です。
◆現行の糖尿病対策
・日本糖尿病学会
普通食を食べる
↓
血糖値急上昇する
↓
大量のインスリンを投与して血糖値を下げる
・長所
(何一つ無い、と言い切ります)
・短所
①大量のインスリンを投与するため、血糖値が下がりすぎて低血糖に陥るリスクがある。
②大量のインスリンを投与するため、薬代が高く付く。
③血糖値が大幅に変動するため、血管の酸化ストレスは軽減されず、合併症が進行する。
④お腹が減る。
◆糖質制限食による対策
・糖質制限食
糖質制限食を食べる
↓
血糖値ほとんど上がらない
↓
最小限の量(基礎インスリンのみとか)を投与すればOK
※容態が良ければインスリン不要になる。
・長所
①最小限のインスリン投与で済むため、低血糖のリスクを回避できる。
②最小限のインスリン投与で済むため、薬代が安く済む。
③血糖値の大幅変動が無いため、合併症を予防することができる。
④腹持ちが良い。
・短所
①米・小麦・芋・砂糖菓子とは永遠の別れになる。
②良質の脂質を選ぶ必要があるので、食品栄養に関する最低限の知識が必要。
③自炊必須。外食は糖質系食品がとても多いため。
◆5年後や10年後
・糖質制限する場合
米やパンは食べられませんが、肉・魚・卵・乳製品などの食事を楽しむことができます。
合併症を回避し、現在と変わらない生活を送る事ができます。
漫画を描き続ける事はもちろん可能でしょう。
・糖質制限しない場合
糖尿病合併症となり、失明・腎不全(人工透析)・下肢切断のいずれか、あるいは全てがやってきます。
身体は壊滅的な状態になり、漫画を描き続ける事は困難になるかも知れません。
◆えーと、つまり…?
・血糖コントロールをすれば怖くない
血糖が上がったり下がったりするのが良くないコト。
血糖は上がりもせず下がりもせず、常に一定を保てるのが一番良い。
・糖質を食べると血糖値が上がる、ならば…
食わななきゃ良いのです。
糖質の代わりに脂質をメインエネルギーにするのです!
というワケにより、たとえ1型糖尿病であったとしても、糖質制限食を取り入れる事で病状をコントロールする事ができます。
元記事の漫画家さんも、糖質制限食を導入する事で多くの問題が解決し、安心して漫画家稼業を続ける事ができるのではと思います。
もし、家族やお友達で同じような病状で悩んでいる方がいらっしゃった場合、やはり糖質制限食を検討される事をお勧めします。
江部先生のブログで聞いてみたり、関連書籍を読んでみたり、あるいは糖質制限治療を推進している医療機関に立ち寄ってみるのも良いと思います。
◆関連リンク
・元記事:「インスリン打たないと死」 漫画家が自身の病気を描いた「1型糖尿病レポ漫画」が壮絶
・日本糖質制限治療推進協会@提携医療機関
・1型糖尿病にして管理栄養士:Cocoroさんのブログ
・江部先生(日本で最も糖質制限治療に詳しい人)のブログ
同ブログ内記事:1型糖尿病。スーパー糖質制限食で8年間インスリンフリー。
同ブログ内記事:日本糖尿病学会及び糖尿病専門医の方々への提言。2017年9月。
・Type 1 Diabetes and The Ketogenic Diet
・The Ketogenic Diet and Diabetes
・Ketogenic Diet and Type 1 Diabetes
・Troy Stapleton - I Manage My Type 1 Diabetes By Eating LCHF
※トロイ博士のスピーチ:「私は糖質制限食を食べて1型糖尿病をコントロールしています」