ビタミンD:それは太陽のエネルギー!
太陽のビタミンとして知られるビタミンDは、カルシウム・リンの吸収を助けて骨を強くするだけでなく、体内の免疫システムを正常化し癌予防能力を高め、1型糖尿病や関節リウマチなどの自己免疫疾患のリスクを低下させることもできます。
概要と利点、そして効果的な摂取方法についてまとめてみました。
◆1.ビタミンDとは
D2~D7の6種類があり、一般的には、そのうち生理活性の高いD2とD3を指します。
D2は一部のキノコ類(きくらげ・シイタケ等)に含まれており、D3は魚類や魚卵、卵黄、そして太陽光(紫外線)によって皮膚下で産生されます。
・ビタミンD2:植物由来
・ビタミンD3:動物・日光由来
※D4~D7:生理活性が低いので、通常は考慮外。
※D1は、D2を主成分とする混合物に対して誤って与えられた名称であるため、現在は用いられてません。
欠乏症の主な原因は、日光曝露量の不足・食事による摂取の不足・過度な紫外線対策が挙げられます。
過剰症の主な原因は、サプリメントや薬剤等による大量・連日投与の場合に発生し、食事からの摂取で過剰症が起きることはほとんどありません。
◆2.ビタミンDの利点
①カルシウム・リンの吸収促進
→骨の成長と形成を助ける。
②抗腫瘍効果(癌予防)
→特に大腸癌、乳癌、卵巣癌のリスクが低下。
③免疫システムの正常化
→1型糖尿病、関節リウマチ等の自己免疫疾患のリスクが低下。
◆3.生合成順序
体内のコレステロールが代謝され、皮膚下にプロビタミンD3が作られる。
↓
紫外線を受けてプロビタミンD3がプレビタミンD3に変化する。
↓
プレビタミンD3が時間をかけてビタミンD3に変化する。(室温で12日ほど)
↓
出来上がったビタミンD3が血液中に取り込まれる。
(食物由来のビタミンDも消化・吸収された後、血液中に取り込まれる)
↓
肝臓で25水酸化ビタミンDに変換される。
↓
腎臓で活性型ビタミンDに変換される。
(活性型濃度が高くなりすぎないよう常に調整されている)
↓
活性型ビタミンDが身体の様々な部位でお仕事をする。
※余ったビタミンDは、脂肪組織にストックされるか、25水酸化ビタミンDの状態で血液中を循環する。
◆4.欠乏症・過剰症
<欠乏症>
骨粗鬆症、くる病・骨軟化症。
1型糖尿病、関節リウマチ等の自己免疫疾患のリスクが上昇。
癌(特に大腸癌、乳癌、卵巣癌)のリスクが上昇。
<過剰症>
食欲不振、悪心、嘔吐、組織の石灰化(カルシウム沈着)。
※高カルシウム血症の結果として発生。
ただし、活性型ビタミンDの濃度は体内で厳密に調整されているため、サプリメントや薬剤等を大量・連日投与しない限り、過剰症が発生することはありません。
◆5.1日の必要摂取量
日本人の食事摂取基準(2015年版)では、以下の通りです。
※1μg=40IU (IU:国際単位)
区分 | 目安量 | 耐用上限 |
成人男性 | 5.5μg/日 (220IU/日) |
100μg/日 (4,000IU/日) |
成人女性 | 5.5μg/日 (220IU/日) |
100μg/日 (4,000IU/日) |
※過剰摂取による害よりも、不足による害の方が大きいため、耐用上限量が2010年度版の1日50μg(2,000IU)から引き上げられています。
参考までに、米国の食事摂取基準(2011年版)では、以下の通りとなっています。
区分 | 目安量 | 耐用上限 | 無毒性量 |
成人男女 | 15μg/日 (600IU/日) |
100μg/日 (4,000IU/日) |
250μg/日 (10,000IU/日) |
70歳以上 | 20μg/日 (800IU/日) |
100μg/日 (4,000IU/日) |
250μg/日 (10,000IU/日) |
太陽光から隔離されるような環境では、上記目安量でも不足する可能性が高いです。
潜水艦乗組員を対象とした研究によれば、10μg/日(400IU/日)の摂取でも血中ビタミンD濃度を適切に維持できなかったとの事です。
◆6.代表的な摂取方法
以下が、ビタミンD含有量の多い代表的な食品です。
品名 | 分量 | 含有量 | 目安量に対する割合 |
全卵 | L5個(300g) | 5.4μg | 98% |
紅鮭 | 切り身1個(80g) | 26.4μg | 480% |
銀鮭 | 切り身1個(80g) | 12μg | 218% |
さんま | 1匹(69g) | 13.11μg | 238% |
鯖の水煮缶 | 1缶(200g) | 10μg | 181% |
しらす干し | 大さじ2(10g) | 6.1μg | 111% |
いくら | 小鉢1杯(60g) | 26.4μg | 480% |
きくらげ(乾) | 5個(5g) | 21.75μg | 395% |
シイタケ(乾) | 3個(6g) | 1.01μg | 18% |
マイタケ(生) | 1パック(90g) | 3.06μg | 55% |
ビタミンDは脂溶性であるため、脂質を含む動物性食品から摂取したほうが吸収効率が良いです。
きのこ類で摂取する場合は、バターやオリーブオイル等を使用して脂質を加えて調理するようにして下さい。
以下は、日光浴によって5.5μgのビタミンDを生成するのに必要な、晴天時の日光照射時間です。
地名 | 9時 (7月) |
12時 (7月) |
15時 (7月) |
9時 (12月) |
12時 (12月) |
15時 (12月) |
札幌市 | 7.4分 | 4.6分 | 13.3分 | 497.4分 (8時間17分) |
76.4分 (1時間16分) |
2741.7分 (45時間41分) |
つくば市 | 5.9分 | 3.5分 | 10.1分 | 106.0分 (1時間46分) |
22.4分 | 271.3分 (4時間31分) |
那覇市 | 8.8分 | 2.9分 | 5.3分 | 78.0分 (1時間18分) |
7.5分 | 17.0分 |
※国立環境研究所のWebサイトより抜粋。
なお、ガラスは紫外線を防ぐため、室内での日光浴では効果がありません。
必ず外に出ましょう。
◆7.サプリメント?
「魚嫌いだし適度に外出しろとか面倒だよ。サプリで何とかならない?」
という人はこちら。
・ビタミンD3サプリメント
1粒で125μg(5,000IU)含んでいます。
2日に1回服用して下さいと記載がありますが、毎日飲んでるけど大丈夫だよっていうレビューもあります。
・タラ肝油
5mlあたり10μg(400IU)のビタミンDと、豊富なビタミンA、ビタミンE、DHA、EPAを含みます。
レモンフレーバーで臭みが無く美味しく飲めるらしい。
・カワイ肝油ドロップ
おじいちゃん&おばあちゃん世代はだいたい知っている昔ながらのビタミンA&D補給剤。
1粒で10μg(400IU)含んでいるが、白糖・ブドウ糖・水飴も含んでいるため、糖質セイゲニストにとっては微妙です。
(この製品は子供向けに開発された経緯を持ちます)
・マルチビタミンとして
私が毎日飲んでいるマルチビタミンには、1粒あたり25μg(1,000IU)含んでいます。
私はこれに加えて、毎日の食事で卵や魚を食べ、定期的なタンニング(日焼け)を行っています。
◆まとめ
ビタミンDは、一日中屋内で過ごす事の多い現代人にとって、最も不足しやすいビタミンの一つだと思います。
毎日の食事に卵や魚を加えるのはもちろんですが、適度に外出して日光を浴びたり、過度な紫外線対策をやめたり等で、十分な量のビタミンDを補給しましょう。
骨が強くなるだけでなく、癌や免疫疾患などの重篤な病気のリスクを低下させる事にも繋がります!
以下、参考記事です。
◆参考記事
厚生労働省:脂溶性ビタミン
日本食品分析センター:ビタミンD代謝物について
国立環境研究所:体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間の推定
25水酸化ビタミンD測定の意義
ビタミンDのエキスパートガイド
ビタミンDの5つのメリット
WebMD:ビタミンD
ビタミンDおよび関節リウマチ
1型糖尿病予防のビタミンD
潜水艦乗組員に対するビタミンD補給
がん予防におけるビタミンDの役割
※日照量が低い地域ほど癌の発生率が高くなっている事を示す論文。
2017年のビタミンDがん予防仮説を支持する証拠のレビュー
※太陽紫外線(UVB)線量と癌の発生率が逆相関している事を示す論文