糖質制限批判動画に対する反論
「糖質制限の闇!痩せない上に寿命が4年減ることが判明」に対する反論動画を投稿しました。
理路整然と反証となる別論文を提示したり、提示された論文の問題点を指摘しますので、巷のYoutuberのようなバラエティに富んだ番組ではありませんが、その点はご容赦下さい。
本ブログ記事では、動画の内容をダイジェストでご紹介します。
◆「糖質制限の闇!痩せない上に寿命が4年減ることが判明」に対する反論
以下、動画の内容をダイジェストでご紹介します。
◆批判内容
・批判①
「糖質の量は関係なく、摂取カロリーの大小で体重減少が決まる」
(論文の提示無し)
→反論Ⅰ:以下の論文を提示します。
「糖質の割合を減らすと消費カロリーが増加する」旨の論文。
・批判②
「糖質制限を続けると死亡率が高まる」(論文の提示あり)
→反論Ⅱ-1:提示された論文の問題点を指摘致します。
→反論Ⅱ-2:反証となる別論文を提示致します。
◆反論Ⅰ:論文の提示
「減量維持中の低炭水化物食のエネルギー消費に対する効果」
・概要
BMI25以上、18~65歳の成人164名を対象としたランダム化比較試験。
高糖質食・中糖質食・低糖質食と参加者を3つのグループに割り当て、食事内容の違いによって、エネルギー必要量がどの程度変化するのかを調べる実験。
・実験結果
高糖質食と比較して、低糖質食では消費カロリーが278kcal/日増加した。
インスリン抵抗性が高い人の場合、高糖質食と比較して、低糖質食では消費カロリーが478kcal/日増加した。
中性脂肪・HDL-Cも、低糖質食が最も改善した。
低糖質食ではグレリンが有意に低下した。
・結論
(1)糖質量の大小で消費カロリーが変化するため、摂取カロリーだけが体重減少の因子ではない。
(2)低糖質食はホルモンレベルで食欲が抑えられるため、過食を防止し、継続性の面で大きなメリットがある。
◆反論Ⅱ-1:論文の問題点を指摘
「食生活の炭水化物摂取量と死亡率」
・概要
米国の4つの地域にて、25年間の食事内容と全死亡率の関係を調査。
糖質摂取比率と死亡率の関係を示した前向きコホート研究。
・実験結果
糖質摂取比率50~55%のグループが最も死亡率が低く、糖質摂取比率40%以下のグループが最も死亡率が高い。
50歳の参加者の平均残存寿命は、糖質摂取比率30%グループの予想寿命が29.1年、糖質摂取比率50~55%グループは予想寿命が33.1年。
※しかしながら、この研究には3つの大きな問題点がある。(後述)
・論文の問題点
①25年間の追跡において、食事調査を2回しか行っていない。
②1日の摂取カロリーがおよそ1600kcalとなっており、アンケートの回答内容は実態と乖離している可能性が高い。
③糖質摂取が最も低いグループは、糖尿病罹患者・喫煙者・運動強度の低い人など、不健康な人達が集められている。
・結論
(1)要素の偏りが非常に多く、糖質摂取比率と死亡率との因果関係を特定する事ができない。
(2)調査回数の少なさ、アンケート回答内容の不正確さにより、データの信憑性が著しく欠けている。
従って、本論文を以って糖質制限の是非を評価するのは不適切である。
・ダメ押し
参考文献の欄には、かの悪名高き能登論文の姿がありました。
※お察し下さい(^^;
◆反論Ⅱ-2:反証となる別論文を提示
「低炭水化物、地中海、または低脂肪食による減量」
・概要
2年間、322名の中程度肥満者を対象とした、食事介入ランダム化比較試験。
ランダムに割り当てられた被験者に対し、低脂肪食・地中海食・低糖質食を割り当て、2年間の体重変化や、様々な血液検査データを測定する。
・実験結果
体重減少量が最が大きかったのは低糖質食、2年後の体重減少量が最も大きいのも低糖質食。
HDL-C、総コレステロール対HDL-Cの比は低糖質食が最も改善。
LDL-C・中性脂肪値は、低糖質食と地中海食にて改善。
糖尿病の参加者において、低糖質食でHbA1cが有意に低下。
低糖質食と地中海食で肝機能が有意に改善。
実験開始から6年後(実験終了4年後)においても、低糖質食は、低脂肪食と比較してより良い脂質プロファイルが保たれた。
・結論
(1)糖質制限を長期間行うと、健康状態が悪くなるどころか、むしろ良くなる。
(2)減量効果も低脂肪食と比べて大きく・長期に得ることができる。
◆反論内容まとめ
・批判①
「糖質の量は関係なく、摂取カロリーの大小で体重減少が決まる」
(論文の提示無し)
(1)摂取カロリーだけが体重減少の因子ではない旨の論文を提示した。
(2)糖質量の大小が、継続性の面においても影響を及ぼすことを示した。
・批判②
「糖質制限を続けると死亡率が高まる」(論文の提示あり)
(1)提示された論文は、信憑性が極めて低いことを示した。
(2)長期間の実施により、健康状態はむしろ改善する旨の別論文を提示した。
以下、リファレンスです。
◆食生活の炭水化物摂取量と死亡率:前向きコホート研究とメタアナリシス
・解説(清水先生) http://promea2014.com/blog/?p=5383
※提示された論文
◆低炭水化物食と全死亡率:観察研究の体系的なレビューとメタ分析
※能登論文
◆減量維持中の低炭水化物食のエネルギー消費に対する効果:ランダム化比較試験
・解説(清水先生) http://promea2014.com/blog/?p=6536
※反論1の論文
◆低炭水化物、地中海、または低脂肪食による減量(DIRECT)
・翻訳(epi-c.jp) http://www.epi-c.jp/entry/e888_0_0042.html
※反論2の論文
◆2年間の食事介入後の4年間フォローアップ
※反論2の論文のフォローアップ